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オルテンシア【紫陽花】~檻の中の花嫁~
第8章 ☆♯05 SceneⅤ(AnniverSarY~記念日~)☆
腕時計を見ると、針は既に深夜零時をわずかに回っていた。あのH市の終日(ひねもす)山の山頂に建つ温泉旅館で左手首を切って自殺を図った美月は直ちにふもとの町の総合病院に運び込まれた。
救急車に乗せられたところまでは憶えているのだが、それ以後の記憶は一切ない。次にめざめたのは、既に丸一日が経過してからのことだ。町といっても小さなものだから、当然、病院などの設備も都会(まち)のようにはゆかず、美月が入院したその総合病院が唯一、病院らしい病院であった。
救急車に乗せられたところまでは憶えているのだが、それ以後の記憶は一切ない。次にめざめたのは、既に丸一日が経過してからのことだ。町といっても小さなものだから、当然、病院などの設備も都会(まち)のようにはゆかず、美月が入院したその総合病院が唯一、病院らしい病院であった。