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理想と偽装の向こう側
第3章 初めての夜
私が言い終わると、小田切さんは焼酎のグラスを静かに置いた。


カラン…

グラスと氷がぶつかる音が響く…。


この微妙な間合いに一瞬、緊張感が走り、私はゴクリとツバん飲んだ。


「言わなかったの?」


「えっ?」


「香織んは、今みたいな言葉を言わなかったの?それが素直な気持ちだったんだろ!」


「あ…素直な…」


「彼に自分が必要だ。香織んじゃないとダメなんだって言って欲しかったんだろ」


「う…うん…」


「素直じゃないね~香織ん!!」


ゴンっ!!!


私は居酒屋のテーブルにおもいっきり額をぶつけた。


自分の不甲斐なさ意地っ張りもさることながら、会ったばかりの小田切さんの一足飛び具合に、私の六年間が砕け散りそうになりテーブルに項垂れた。


「香織ん、大丈夫~?めっちゃいい音したよ~」


「…貴方、何もんですか?!」


「小田っちです!!」


と、言って親指を立てる。


「………」



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