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理想と偽装の向こう側
第9章 衝動と不安
◎ ◎ ◎ ◎

大人しく着いていくと、川沿いに出た。


お酒で火照った身体には、気持ちいい涼しさだった。


私の前を黙って歩く嘉之。


どこまで行くんだろう?


三次会は、大丈夫なのかな?


この沈黙と状況の不安にかられて、私は口を開いた。


「嘉之さん!月が綺麗ですよ!ほら、満月です!」


むちゃなフリだったかも…けど


「あぁ…綺麗だな」


よっし!進展したぞ!


「どこからでも同じモノが見えるって、素敵ですよね?」


「どうゆうこと?」


「なんか…離れてても同じもの見れてたら、心は繋がってそうな気がして。月だけじゃなくて…理想や夢も。身体は違えど同じ夢描けたら、心は繋がっていられるのかもって…」


嘉之は黙って聞いている。


「嘉之さんが描いてる夢…少しくらい同じ夢描けられたら…いいな…」


そしたら何よりも、強い絆が出来る気がした。


「…香織…」
「えっ?」


今、名前…じゃなかった?


振り向くと嘉之は、何か思い詰めたような表情をして、私に近づいた。


「嘉之さ…」


言葉は、途切れ…唇が重なり…



嘉之にキスされていた…。 

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