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理想と偽装の向こう側
第12章 板ばさみ
「小田っ…!」

「スタート~!」


DVDが再生されたが、背中が小田切さんに密着しているし、更に両腕で後ろから回りお腹の辺りで手まで組まれて、スッポリ包まれてしまってる。


たまに小田切さんがビールを飲むのに手が外れるんだけど、何故か小田切さんの右手が私の右手を握ったままでいる。


そんな状態で二時間が過ぎ、私は眼を見開いたまま観ていたが正直内容なんか全然覚えちゃいない。


「終わった~結構面白かったね。あれ…香織ん固まってるけど怖かった?」


「いえ…」


ある意味、怖かったかも…。


てか、二時間気が張りすぎて、全身筋肉痛になりそうなんですけど!


「もう一本借りて来たんだけど、続けて観ちゃう?どうせ明日休みだし~」


小田切さんは私の肩に顎を載せながら、DVDを取り出そうとしていた。


…それよか、いつまでこの態勢なんだろう…。


ずっと背中が密着したままだし、小田切さんの声が耳元で響いて、私の脳ミソも心臓も爆発しそうだ。

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