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理想と偽装の向こう側
第13章 対決
木曜日

あれから二週間くらい経った。


嘉之からはメールも電話もいっさい来なくなり、表面的には穏やかな時間が過ぎていった。


なんか嵐の前の静けさに感じて、また嘉之か何かしてこないかと頭の片隅で毎日考えていた…。


ある意味、忘れられない…。


『俺だって香織を離す気はないから!』


あの言葉は本気だろう…
自分の玩具は取られたくない子供と一緒…。


「おはようございます」


「おはよう!渡辺さん、頼みたい事があるんだけど!」


デスクに着くと、井関さんに呼ばれた。


「はい!何でしょうか!」


「またパシリみたいで悪いんだけど、この資料この場所に届けてくれる。急ぎで頼まれちゃって」


「分かりました!しかと渡して参ります!」


井関さんは、笑顔で


「頼りになるわ!渡辺さんの仕事は、分配してやっておくから直帰して、大丈夫よ」 


「えっ!でも、戻ってこれますよ?」


「もしかしたらカタログの説明してもらうかもって、先方が言ってるのよ」


「なるほど!分かりました!来た早々、お先です!」


井関さんは笑いながら


「宜しく、頼むわね!」


と、送り出してくれた。 

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