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理想と偽装の向こう側
第14章 時限爆弾
大丈夫じゃないの、分かってるくせに…。


「………」


「疲れたよな…泊まってけば?」


そんなこと出来る訳ない…。


辛うじて、声を出す。 


「明日…仕事…」


「そっ…残念っ!」


起き上がれない私に、嘉之はベッドに腰掛け片手を伸ばし、顔にかかる髪を払いながら、  


「久々だったから、歯止め利かなくて…香織の声、聴いてたらつい夢中になっちまった…」


愉快そうに語りながら覆い被さり、顔を近付け軽いキスをする。


「香織…気持ち良かった?」


「くっ…!」


思い出したくないシーンを否応なしに、呼び戻させる。


「服、着る?」


「う…ん…」


私が、躊躇していると


「あっ!これ外さないと、着れないか…」


嘉之は白々しく言いながら、私の手首を縛ってた布を解いた。


「痛かった…?」


「…平気…」


手首より…

心が痛いよ…。


「下に車持って来とくよ…降りて来られる?」

「……」


無言で頷く。


「待ってるよ」


また軽くキスをして穏やかに微笑み、嘉之は駐車場に向かって行った。

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