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理想と偽装の向こう側
第16章 懐古
3年前

「ブイ~ン…ブイ~ン…」


胸元に入れた携帯のバイブが響いた。


メールの差出人は、会社の同僚の滝島からだ。


開封すると写メと一緒に


『元気な女の子~!3100グラムだ!』


と、書かれていた。
滝島の幸せそうな顔と、赤ちゃんの可愛らしさに、自然と笑みが浮かぶ。


『おめでとう!とうとう父親だな!しっかりしろよ(笑)』


素直に、お祝いの言葉を送ると。


『嫁には、やらんぞ!!』


「ぷっ!気早っ!」


『今度、病院に祝いに行くよ』


そう伝えると


『来い!来い!嫁さんも会いたがってるぞ~!』


「ははっ!」


滝島夫妻は、本当に和む。
社内結婚でお嫁さんも面識があったから、結婚後も家には時たま遊びに行っていた。


「結婚か…」


29歳にもなってそれなりに何人か付き合ったけど、結婚には至らなかった。


ここ最近、彼女もいないな…
職場にしても、何か遠巻きにされてる感がある。


ただ寝に帰るだけの2Kのアパート。


特に大きい家に、引っ越す気もない。

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