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理想と偽装の向こう側
第16章 懐古
「水越さん…手、繋いでいい?」


笑いかけながら、そう言うと


「はっ!はい…お願いします…」


はは…またか!
寧ろこっちが、願ってるのに。


「お願いします…」


そう言って、彼女の手を強く握った…。


小さな手だな…。


小さい頃、居なくなった優しい父親…。


苦労して育ててくれた母親…。


子供たちと、汗だくで遊ぶ姿…。


産まれてくる子供たちに、編む靴下…。


彼女が願った、温かい食卓…。


ただ、純粋に家族がみんなで居る事を願ってるんだ。


それが彼女の夢ならば、俺が叶えたい。


俺と一緒に、見て欲しいと思った。


「水越さん…猿山、見よっか!」


「はい!猿の赤ちゃん見れますかね!」


「見れるよ…可愛いいだろうね」


「はい!」


彼女は俺を見上げて、瞳を輝かせた。

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