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理想と偽装の向こう側
第16章 懐古
水越さんに分からないように深呼吸し、自制心を働かせる。


落ち着けっ!自分!


目の前の水越さんは、自分の唇を指でなぞりながら、ぼうっとしていた。


ヤバい…
引いちゃったかな…。


「水越さん?」


恐る恐ると声をかけると、虚ろな視線で一言…


「キスって…気持ち良いんですね…」


ドッカン!!
爆撃され思わず吹き出しそうになる。


「ぶっ…ゴッホ!そ、そう?」


「経験なかったから、ドラマとかで見てても…口と口くっ付けて、何が良いのか分からなかったけど…」


「誰でも彼でもじゃないと思うけど…」


自画自賛じゃないけど、ちゃんと言っとかないと、ヒヨコの刷り込みになってしまいそうだ。 


「唇触れてるだけで、フワフワしてきて…何か凄い安心感に包まれました」


ウットリした瞳で、微笑みながら呟いている…。


絶対に自分がどれだけ爆弾発言してるかなんて、微塵も自覚ないだろう…。


何とか抑えようとしてる、欲望を刺激されていく。


悪い癖だな…

つい口を衝く


「もう一回する?」


俺は彼女の唇を親指でなぞった。


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