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理想と偽装の向こう側
第16章 懐古
月曜日

「ふぁ~あ…」


今朝から欠伸が止まらない。


案の定、俺は余り寝れなかった。


浅い眠りを繰り返す狭間に水越さんの顔や仕草や言葉がリピートして、心臓が激しく脈打った。


30歳近くにもなって正直情けないけど、今までこんなに翻弄されたのは彼女が初めてだった。


「はぁ~あぁ…」


「信リンたら、朝から何回も欠伸して~!厭らしい!気だるい姿も様になるね~!」


一言余計な事を言いながら滝島がブラックコーヒーと、チョコレートを出してきた。


「サンキュー!チョコレート何で?」


「血糖値上げて、脳ミソ活性化したまえ!」


何気に気が利くんだよな…
俺はチョコレートを口に放り込んだ。


「あ~旨いわ!」


「で…昨晩は、ヒナちゃんと甘々な夜だったの?」


コーヒーを飲もとした俺の耳元で、滝島は態とらしいイントネーションで囁いた。

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