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理想と偽装の向こう側
第20章 さよなら
小田切さんのそっと優しく触れていく唇が、本当に気持ち良い。


首筋に腕や手に…
至るところに大事そうに触れてくれた。


「はぁ…」


服を脱がされる訳じゃないけど、生地通して温かさが伝わる。


小田切さんが抱き締めて触れてくれてるだけで、揺り籠の中に包まれてる様だった。


「あっ…小田切さん」


「なぁに…香織…?」


ウットリと、眼を少し開き


「気持ち…良い…」


「そう…どうして欲しい…」


どうして…?


「手…握って…」


「いいよ」


小田切さんは私の手に指を絡めて、しっかり握ってくれた。


「ふふ…嬉しい…」


「そう…他は?」


きっと私は、疲れと気持ち良さで朦朧としてたんだと思う…。


「…胸…」


「………香織…」


「ふぅ…スゥ…」


「…胸ね…」


すっかり夢の中に誘われた私は、寝言の様に言ってしまった結末がどうなったかは…

謎のままだった。


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