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理想と偽装の向こう側
第21章 逆転
「こ、これはね…」


ヤバい…
上手く言い訳が出来ない。


頭の中が、真っ白になる。


「…嘉之か…」


「あっ…」


今まで、聞いた事のないくらい低い声だった。


「小田切さん…」


振り向くと眼は睨む様に空を見据え、怒りが露になっていた。


「あいつ…また、何かしてきたの?」


「だ、大丈夫…逃げ切れたから」


「でも、こんなにくっきり痣になって…何されたの…」


私の両手を掴み、手首の痕を苦しそうに見詰める。


「ごめんなさい…怒ってる…」


小田切さんを怒らせるつもりは、なかったのに。


「香織んが、謝ることじゃないよ…嘉之には、怒りたくもなるだろ!」


そう言うなり、力強く抱き締めてくれた。


「いつも…いつも…許せない…」


小田切さん…
こんなに怒ってるの初めて見た。


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