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そのキスは許されていない……
第4章 現の後(うつつののち)(お嬢Side)
私は今夜わざわざ、このホテルに泊まった。

それはあの人がここにいると佐伯に聞いたからで…

私の知らないあの人を、ひとめ見てみたいと思ったからだ。


あの人は私のモノなのに、ここ数年私のことをずっと避け続けている。

二人目の娘が産まれて以来、仕事により精進するためと言い訳をして

単身赴任であちこち逃げ回っている。


呼び出したとき…

何か用事のある時やお盆と年末年始にお情け程度に帰省する以外、

あちらからは一切なんの連絡もない。


それを許しているお父様の考えがわからず何度か直談判した。

しかしお父様から返ってきたのは

「男にはそういう時期がある。将来白石家を盛り立てるためにも

しばらくは仕事に没頭する方がいい。

お前も今そういう時期だろう?とやかく言わず黙って見ていなさい」

とたしなめられそれ以上有無も言わせてもらえなかった。


私も2人目を出産後しばらくしてから

娘たちをシッターに任せ仕事にのめり込んだ。


寂しかった…

娘はかわいかったが、どうしてあの人が私達を見捨てるように

家を出て行ったのか。

どうして、あの人は家に近寄らないのかそれが私には

どうしてもわからなかった。


そんな私の側にはいつも佐伯がいてくれた。

子供の頃は世話係として…

今は秘書として…
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