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女子大生 成宮恵理
第2章 嵐の日
「何?」
「冷たいなぁ、恵理は。」
「え?何が?」
「いやだって俺ずぶ濡れだし、この雨だよ?」
「だから何よ。」
「あれ、なんか怒ってる?」
「別に……もう、だから何が言いたいの?」
「いやこの雨だし、少しの間だけ雨宿りさせてくれないかなぁ……なんて。」
「私の部屋に?」
「そう、ダメ?」
「……駄目だよ、そんなの。」
「えーなんでさ?前はよく奈々と3人で恵理の部屋でも遊んでたじゃん。」
「それは……前まではね。でも今は違うじゃない、その……色々と。」
「あ、もしかして奈々に気を使ってるのか?そんなの気にしなくていいのに。俺が恵理の部屋に入ったからってアイツなんとも思わないぜ?確かに嫉妬深いところあるけどさ、恵理なら別だよ。俺達の仲じゃん。」
確かにそうかもしれない。
奈々は悠一郎から恵理の部屋で雨宿りをさせてもらったと聞いても、きっと心配も嫉妬もしないだろう。
なぜなら3人は少し前まで凄く仲の良い友人だったから。
男女の友情は成立しないなんてよく聞くけど、少なくともこの前までは成立していた。恵理はそう思っていた。
同じ大学で知り合った3人。
しかも偶然にも恵理と奈々は同じアパートの隣同士。
だから悠一郎はよくこのアパートに遊びに来ていた。
ある日は奈々の部屋で3人でゲームをしたり、ある日は恵理の部屋で鍋パーティーをしたり。
男とか女とか関係なく、まるで兄弟姉妹のような。そう、確かに3人は親友と呼んでもいい程仲が良かった。
しかし、その関係がある日を境に変わってしまった。
いや、〝崩れてしまった〟と表現してもいいかもしれない。
恵理は奈々から初めてそれを聞かされた時、確かに心の中の何かが崩れていくのを感じたのだから。