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隠匿シリーズ☆番外編
第6章 彼の忘れられない人は……?
半月型の黄色い月がラインハルト上空に浮かび、それに寄り添うように瞬く星が輝いている。だが月はいつしか星を置き去りにし、ゆっくりと移動していた。
ここアッシュブラン邸では月が顔を見せ始め、そして頂上から傾いて行く間にも、そこに集まる面々は酒を酌み交わし、騒がしい時間を過ごしていた。
──ただ一人を除いて。
「あーあ。ニーナまで潰れちゃったかぁ」
酩酊しきった顔で溢したのは、ワインレッドの髪をひとつに束ねるセドリックだ。
「リンゼイ様も気持ちよさそうに眠っていますね」
こちらも酩酊した顔で、愛する妻の寝顔を見遣るのはアリエッタの兄となったジョシュアだ。
話題にされたニーナとリンゼイは、ふかふかのソファーで身を寄せ合うように寝息を立てている。先ほどまで酒に酔い、騒いでいたのが嘘のように。
「アリエッタは? 眠ければ俺に寄りかかって寝ていいからな」
酒の影響で僅かに目許を赤く染め、甘やかな笑みを向けてくるのは、愛しい夫であり、この邸の主人、レオだ。
「え、えぇ」
アリエッタはそのレオに複雑そうな表情で曖昧に笑った。
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