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隠匿シリーズ☆番外編
第8章 次期執事は誰の手に

「成功したら、本当に昇格出来るんですか?」
ディランは眼を輝かせる。
「まだ見習い扱いですがね。それと浮かれている場合ではないですよ。この件は極めて重要で、危険です」
ジョシュアはディランにこの案件がいかに重大であるかを説いて聞かせる。
──事の発端は宮廷医と親交のある医師の元に、ある貴族夫人が担ぎ込まれたところから始まった。
その医師によると、夫人は何かの薬物の中毒症状だったそうだ。夫人の意識は混濁しているにも拘らず、肌は異常なまでに敏感なことから、媚薬の類ではと診断した。
考え得る限りの治療をしたが、なかなか回復しない。夫人の夫のたっての頼みで、国でも一、二を争う名医の宮廷医に相談を持ちかけた。
医師たちの治療の甲斐があり夫人は回復したのはいいが、どのような薬物を口にしたのか決して言わなかったそうだ。口を割らないだけならまだしも、薬物など口にしていないと誤魔化す始末。
夫は夫人が助かったのだから追及しないと言い出し、大事〈オオゴト〉にすれば醜聞になることもあり、医師たちに口止めしたそうだ。
だが、その後相次いで同じように担ぎ込まれる女性が出てきた。
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