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あなたの面影
第12章 傷の深さ
「違うっ……そんなんじゃない……わたし……優しくなんかっ……」

彼のシャツの胸元を握り締めてすすり泣く。
一仁さんはその手を優しく外させた。

「はやく聡志のところへ行ってあげろ……じゃあな、瑞波……さようなら……」

手に持っていた傘を広げ、私に無理矢理持たせると一仁さんは立ち上がった。
顔をあげられない私は彼の足元を見詰めていた。

ゆっくりと、一仁さんの靴は立ち上がる水しぶきの中へと消えていった。

一仁さんはなんにも悪くないのに……
一仁さんだけは傷つけたくなかったのに……

一仁さんを一番傷付けてしまった……

最低だ……私……

ずぶ濡れの体を起こすと雨水が滴り落ちる。
髪の芯まで濡れて頭が重い。

時が巻き戻せるならやり直したい……
でもどこまで巻き戻すの?

聡志が帰ってきたあの日?

一仁さんと出逢った日?

聡志が失踪する前?

それとも聡志と出逢う前だろうか?
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