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《番犬》が女に戻るとき...
第25章 みとめない!
「その冊子…」
茜の右手にぶら下がった紙袋。
「そっか、それを渡しに戻ってきてくれたのね。ごめんねうっかりしてて…」
梗子はハルクの背後から前に回り込んだ。
そして二人の間にスルッと入ると、茜の右手を両手で掴んだ。
「ありがとう…」
「……っ」
茜は構えていた拳を下ろして目をそらす。
また──やってしまうところだった。
花崎さんの前でまた、私は男に暴力を…っ。
──…
『わたしのせいだよね…、わたしが、いつまでたってもこんなだから…!! 』
『…違う、花崎さんは悪くない』
『わたし強くなるから。──だから…だからお願い茜ちゃん…、もう……っ…』
この夏に起こった、花崎さんを狙うストーカーによる、下着泥棒事件──。
あの時の、梗子の言葉。
男を殴り飛ばした茜の手を、両手で包んで俯くその姿──。
──…
「…ごめん」
それが、今の彼女と重なる。
もう暴力はやめてくれ
そう言いたいに違いなかった梗子を、茜はまた裏切るところだった。