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《番犬》が女に戻るとき...
第26章 訣別
目線を落として茜が謝った。
「ごめん…花崎さん」
怒りに任せてふるったあの日の拳は、大切な親友を怖がらせた。
守りたかったのに、怯えさせた。
「『暴力はやめてほしい』って…あの時、花崎さんに言われたのに、結局…──」
「……?」
「私は何も変わってないな…ッ」
「待って、茜ちゃん。…わたし…いつそんな事を言ったの?」
「…え」
首をかしげた梗子。
彼女には『暴力はやめてほしい』なんて…そんな事を茜に言った覚えがなかった。
「…言ったろう?…ッ 夏に、私がそんな騒ぎを起こしたもんだから…っ」
しかし茜にしてみれば、確かにそう言われた筈。
ストーカー男を病院送りにした茜に、梗子が泣きながら訴えてきた──
「…、…あ」
そういえば
『わたし…もっと強くなるから。だからお願い茜ちゃん、もう…──』
もう…
その先は?
聞いていなかったかもしれない。