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《番犬》が女に戻るとき...
第26章 訣別
暴力をふるうのはやめてほしい
てっきり彼女はそう訴えてきたのだと、思い込んでいた。
「クスッ、…ほらね、言っていないでしょう?」
「う、うん」
途切れた言葉に続く梗子の思いは
それとは違う。
「なら、なんて言おうと…?」
「──…そうね、あの時は…」
梗子は思い出そうと目を閉じた。
堪えきれない涙を流しながら、あの時、自分が何を伝えようとしたのか──
…そして、思い出した。
「…もう茜ちゃんに、自分を犠牲にしてほしくなかった、から…。そう言おうとしたんだと思うわ」
「犠牲にって…っ、…!?」
「だって茜ちゃんは女の子だから」
「……!」
「番犬なんかじゃあ、ないから…!」
そう言った梗子は、同時に
身をのり出して茜の方に手を伸ばした。
茜の帽子のつばを掴んで、彼女はそっと…頭から帽子を取り去ってしまった。