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『うぅ』としか鳴けない
第21章 実状観察
女の足の間の男の左足が、女の右足を広げた。

「これって、痴漢?!」

しかし、女は、『痴漢です!助けて!』とはさけべなかった。足が開いただけ。あとは何もないのだから……

女の名は笙子(しょうこ)という。
笙子は、だんだん異様な気配を感じているようだった。

「大丈夫、あと4駅で降りれる。この足さえ何とかなれば…」

『すみません…足が…』

『あ、いや、すいませんねぇ、動かせなくて…』

本当に申し訳なさそうに言う男に、笙子は警戒心を緩めてしまった。

再び、大きな揺れで、バランスを崩した笙子。

『うっ!』

左隣の男の足をピンヒールが踏んでしまう。

『ごめんなさい!』

『危ないから、吊り革をどうぞ。』

「大丈夫です」と言えない。その男の足を踏んでしまったのだから……




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