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堕ちても
第2章 カマキリ
 
 
―――ねェ、おねえさん、知ってる?


ふと、背中に聞こえる声音におどろき、ふりかえる。

するとそこには、黒髪の少女が、凛と立っていた。

頬に伝う斜光(しゃこう)が、妙に彼女を魅力的なものにみせた。

麦色のブレザー。灰色のミニスカート。蒼黒(あおぐろ)のハイソックス。

高校生―――いや、中学生か。

おそらく、登校するまえに、立ち寄りに来たのだろう。

そう思った。

「あ、いらっしゃい。どうしたの?」


少女は、一拍置いて、


「カマキリってさァー。エッチしたあと、どうするか知ってる?」


「え?」

この娘(こ)は、唐突になにを言うのだろう。

びっくりして、すこし、無意味な時が流れた。

「ぼく知ってるよ?」

―――ぼく?このコ、女の子なのに、じぶんのこと、ぼくって云うんだ。

でも今の時代、それほどめずらしいことでもない。


「エッチしたあと、その相手をばりばり食べちゃうんだって」


 
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