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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第21章 《巻の参―秘密―》
針を含んだように鋭い視線にもたじろがず、定親は泰雅をじいっと見つめた。その眼は底知れぬ湖のように不気味に静まり返っている。その凪いだ様子がかえって、この男の底知れなさを窺わせる。
「今日は是非、二人だけでお話致したいことがございましてな。ああでも申し上げねば、榊原どのは話に応じては下さらぬであろうと思うたのです。ご無礼の段はこのとおり、ご容赦願いたい」
そう言って頭を垂れられれば、年若い泰雅は何も言い返せない。