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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第21章 《巻の参―秘密―》
「されば、私と二人だけで話したいとは、そも何用にござりましょう」
将軍家宗公の容態に目立った変化はない。突如として倒れて既に数日が経過していたが、いまだ意識の回復はなかった。医師が耳許で名を呼べば、かすかな反応らしきものが返るときもある。とはいっても、ごくわずかに瞼が震える程度のもので、よくよく気をつけて見ていなければ判らないし、それが果たして偶然なのか家宗公自らの意思で動いているのかは定かではない。