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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第21章 《巻の参―秘密―》
「阿倍どのは、私を何か随分と買い被っておいでのようだ。私は阿倍さまの仰せのような徳高き、高潔な人物にはほど遠い男にござります。私が女狂いと囁かれるほどに遊興に現を抜かしておることは、阿倍どのもご存じにござりましょう。そのような人間が将軍の器に相応しいなぞ笑止千万。それに、阿倍どの。私の父は断じて公方さまなどではない。私がこの世に父と呼ぶのは、私を慈しみ、教え導いてくれた亡き父榊原泰久のみにござる。滅多なことは仰せにならないで頂きとうございます」