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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第21章 《巻の参―秘密―》
―良い加減に逃げるのも己れを偽るのもお止めなされ。国のために、政の世界に、己れの才覚を活かし働こうとは思いませぬか。
―この男は。
泰雅は愕きに満ちた眼で老中阿倍定親を見つめていた。それまでは、ただ己れの保身図ることと権勢欲の強いだけの野心家と思い込んでいたのだが、この阿倍という男、思いの外、筋の通った人間のようであった。頭の回転も速いし、先を見透す確かな眼を持っている。まさに、生まれながらの政治家であった。