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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第24章 《巻の弐―夢を売る男―》
 当時五歳になったばかりの泉水が母の死をとりわけ哀しいと思えなかったのも致し方なかったのかもしれない。
 自分のように母の想い出そのものがないのと、おつやのように優しい母の記憶が存在し、その想い出ゆえに過去にこだわり、縋り続けねばならぬのと、果たしてどちらが幸せなのか。泉水には判らない。
 おつやは、二本目の桜団子を頬張っている。その頑是ない様子を見ながら、泉水は複雑な心境であった。
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