この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第25章 《巻の参―真(まこと)―》
二年前、家を出たおはるには、その時、男がいたのだ。おもんと同様、勤める縄暖簾の客と深間になっていたのである。相手の男は研ぎ屋を生業(なりわい)としていた。当時、二十一だったおはるより一つ下で、男ぶりも良く、その店でも女たちからモテたという。悪い人間ではなかったけれど、どこか冷たい感じのする利己的な男で、度量はあまり大きそうには見えなかった―と、人の好さげなおもんですら、その男辰平のことは、あまり良くは言わなかった。