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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第25章 《巻の参―真(まこと)―》
 それでもなお、泉水は、おつやに嘘をつかずにはいられなかった。ありのままの真実に含まれた、ほんの少しだけの嘘だった。
 ささやかな嘘をついた泉水を、夢五郎はどう思うだろうか。逢って訊いてみたいような気もする。
 泉水を取り巻く現(うつつ)の世界を、それこそ夢のように一瞬駆け抜けて、去っていった男であった。今日もまた、あの夢売りは江戸の町のどこかで、夢札を売り歩いているのだろう。

 その日を境に、泉水が闇の中ですすり泣く女の子の夢を見ることはなくなった。

(第六話 【夢売り~夢を売る男~】了)





 
 
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