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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第29章 《巻の壱―すれちがい―》

そう、すべては順調にゆき、泉水は幸福そのものだったはずだ。愛する良人の傍で妻として穏やかな日々を紡いでいるはずであった。なのに、いつから、その平穏なはずの日常の均衡が崩れてしまったのか。
泉水は五千石を賜る直参旗本榊原泰雅の正室であり、去年の如月に泰雅の妻となった。五歳で母を失ったものの、勘定奉行槙野源太夫宗俊の一人娘として育った泉水は天真爛漫でお人好し、人の不幸は見過ごしにはできないといったお節介なところがある。
泉水は五千石を賜る直参旗本榊原泰雅の正室であり、去年の如月に泰雅の妻となった。五歳で母を失ったものの、勘定奉行槙野源太夫宗俊の一人娘として育った泉水は天真爛漫でお人好し、人の不幸は見過ごしにはできないといったお節介なところがある。

