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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第29章 《巻の壱―すれちがい―》
その心遣いに、泉水は素直に感謝した。いくら今を時めく勘定奉行の娘とはいえ、榊原家に嫁した今、泉水はこの家の人間だ。嫁して一年を過ぎても一向に身ごもることもない身を思えば、泰雅が重臣たちに勧められて側女を持った後に〝事後承諾〟という形で知らされても、文句は言えない。
それなのに、事前に話を通してくれたことに、ありがたいと思った。が、この儀は結局沙汰止みになった。何より、泰雅自身が泉水以外の女に眼を向けようとしないのだ。
それなのに、事前に話を通してくれたことに、ありがたいと思った。が、この儀は結局沙汰止みになった。何より、泰雅自身が泉水以外の女に眼を向けようとしないのだ。