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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第29章 《巻の壱―すれちがい―》
「もう、いや。いやじゃ。私はいや。あんなことは二度としたくない」
「お方さま」
 何とか落ち着かせ宥めようとしてみても、泉水は珍しく聞き分けのない幼子のように烈しく首を振った。
「時橋、助けて。私を助けて。いやなの、私、いやなの―」
「お方さま、お鎮まり下さいませ」
 泣きじゃくる泉水を引き寄せ、幼い頃からよくそうしたようにポンポンと背中を叩くと、泉水は次第に泣き止んだ。
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