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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第30章 《巻の弐―決別―》
もし、その時、泉水がうつむいていなければ、その眼のあまりの暗さに愕いたに違いない。空(くう)を映すだけの双眸はゾッとするほど暗澹としており、あたかも無限の闇へと続いてゆくようでもあった。
気づまりな沈黙に押し潰されそうになった時、漸く泰雅が口を開いた。
「そんなに俺がいやなのか? 俺に抱かれるのがいやになったのか?」
切なさを帯びた口調で振り絞るように言う。そこには闘いに敗れた後のような男がいた。