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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第30章 《巻の弐―決別―》
 そんな泉水と行を共にすれば、時橋が苦労するのは明白である。幸いにも時橋には三人の娘たちがいて、それぞれに嫁いでいる。良人には先立たれてはいるが、この榊原の屋敷を出たとしても、いずれかの娘の許に身を寄せることができるだろう。
 せめて行き先だけでも時橋には告げたいけれど、それではかえって時橋に累が及ぶ。何も言わずに出てゆくことが、長年の恩に報いる唯一のことであった。
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