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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第4章 《参の巻―囚われた蝶―》
だが、その声も乳母には届かなかった。生憎、火の用心の見回りの時間にでもなっているのかもしれない。むろん、火の当番の女中は別に定められてはいるが、几帳面な時橋は毎夜、自らも泉水の部屋の近辺を自身で確かめるのを日課としているのだ。
大抵は夜も近くの部屋で寝み、泉水の様子に何くれとなく気を配る時橋なのに、今宵に限っていくら泣き叫んでも来ない。
何故か、その時、唐突に泉水の瞼に一人の少年の笑顔がよぎった。