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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第32章 《巻の四―散(ちる)紅葉(もみじ)―》
《巻の四―散(ちる)紅葉(もみじ)―》
その朝、泉水はふと思い出して、寝室として使っている畳の間の姫鏡台の引き出しを開けた。朱塗りに桜の蒔絵が施されたそれは、村長からゆずり受けたものである。
亡くなった女房が隣村から嫁いできた遠い昔に嫁入り道具として持参したといい、流石に富裕な豪農の長女として何不自由なく育ったというだけはある。こんな田舎の鄙びた村でお眼にかかることはないような逸品であった。