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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第32章 《巻の四―散(ちる)紅葉(もみじ)―》
 泉水は首を振った。いけない、こんなことでは駄目だ。人が、人を信じられなくなったら、それでおしまいだ。たとえどんな境涯に陥ったとしても、人を信じる心だけは失いたくない、失ってはならない。泉水は絶望の深淵へとまっさかさまに呑まれてゆこうとする自分を感じ、その怖ろしさに身震いした。
 それほどに、自分の絶望と苦悩は深いのか。当の自分ですら、推し量れないほどに。
 物想いに耽っていると、思い出したくもない忌まわしい想い出が次々と眼裏に蘇る。
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