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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第32章 《巻の四―散(ちる)紅葉(もみじ)―》
 両手で顔を覆っていた泉水はハッと顔を上げた。侵入者はついに戸を破ったらしく、脚音がこちらへ近付いてくる。湯殿の戸が開く音が聞こえ、次いで、再び脚音が次第に向かってくる。見つかってしまうと、泉水は身を固くして怯えた。
 脚音がピタリと止む。押入れの前に誰かがいるのが判った。泉水は息を呑んだ。ふいに押入れが外から力一杯開けられた。泉水は怯えを宿した眼で眼前に立つ男を見上げた。
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