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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第32章 《巻の四―散(ちる)紅葉(もみじ)―》
 あのときの泉水は、たいそう愕いたようだった。その愕きは、すぐに烈しい怯えに変わった。まるで見も知らぬ不審な男を見るように、大きな瞳を見開いて怯えていた。その反応も泰雅にとっては意外であった。
 泉水をひと月ぶりに見た時、泰雅は考えた。もし、泉水が素直に謝って、共に江戸に戻るというのであれば、今度だけは許してやっても良い、と。他人が聞けば、そこまで女に入れあげ、腑抜けてどうすると言われるだろうが、泰雅はそれでも構わないと思っていた。
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