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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第34章 《巻の壱―山茶花の寺―》
―あまりに長う生きすぎてしもうて、自分の歳も判らんようになってしもうたわい。
 いつか、そんなことを言って笑っていた。当時としては、かなりの長寿だ。実際に伊左久が自分の歳を忘れているかどうかは定かではないが、七十年近くもの星霜を生きてきた身にとっては、今更己れの歳のことなぞ、たいした問題ではないのかもしれない。
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