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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第34章 《巻の壱―山茶花の寺―》
 花の色は紫ががった紅色もあれば、淡紅色、白、それらが微妙に入り交じったぼかしもあった。色とりどりの花が緑の葉の茂みについていて、圧巻とさえ言えた。泉水はしばし、その光景に眼を奪われ、立ち尽くしていた。
 そのときの庭の風景は、鮮烈な記憶となって、泉水の心に灼きついた。ささくれ立った心の疵(きず)が癒やされてゆくような、洗われてゆくような気がした。初めて脚を踏み入れたこの寺が自分を両手をひろげて迎えてくれているように思えてならなかった。
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