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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第34章 《巻の壱―山茶花の寺―》
 元々、この山は深山というわけではなく、標高も知れている。山の頂に小さな寺―というよりは庵(いおり)があるとは聞いていたけれど、まさか実際にこの眼で見る機会に恵まれるとは考えてもいなかった。この庵こそが現在、身を寄せている月(げつ)照(しよう)庵(あん)である。月照庵はまたの名を観月庵、月照寺とも呼ばれていた。
 惚けたようにその場に立ち尽くしていた泉水に声をかけてくれたのが伊左久であった。
―どうした? 我らが庵主さまに何か用かな。
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