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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第34章 《巻の壱―山茶花の寺―》
まだ、はきと自覚することすらない中に消えた儚い恋であった。篤次の優しげな笑顔を思い出すことはあっても、今となっては泉水にとっては遠いひとになってしまった。
折角手にした新しい生活を失い、泉水は絶望のどん底に突き落とされた。どこまで逃げれば良いのか、どこにゆけば、泰雅の手から逃れ、本当の自分を取り戻せるのか。行き場を見失い、闇の中でもがき苦しんでいた泉水に手を差し伸べてくれたのが光照であった。