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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第35章 《巻の弐―再会―》
「これ以上は駄目だ、話せねえ。庵主さまはご自分の昔について語られるのをひどく嫌われるからな。もっとも、儂だって、そう詳しいことは知らない。何しろ、あの方からあの方自身の身の上話を聞いたことは一度もねえんだから」
 伊左久は早口でまくし立てると、すっと背を向けた。到底それ以上は訊ねられる雰囲気ではない。泉水はそのまま水汲みに出かけた。
 近くの川までゆき、水を二つの桶いっぱいにして戻ってくると、厨房の土間にある水瓶に移す。それが今一日分の水になるのだ。
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