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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第36章 《巻の参―杏子の樹の傍で―》
「お腹のお子さまのお父君は榊原の殿さまでいらっしゃるのですね」
 泉水が小さく頷く。こらえきれなかった涙が次々に溢れ、したたり落ちる。
 時橋は泉水を抱きしめた。
「うっ、えっ、えっ」
 泉水は時橋の腕の中でまた泣いた。今度はもっと大きな声で、まるでこれまで溜めていた哀しみや、やるせなさをすべて爆発させるかのように泣いた。
「さぞ、お辛かったでしょう。お可哀想に」
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