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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第36章 《巻の参―杏子の樹の傍で―》

「そなたにはまた要らざる苦労をかけてしまうけれど、私はもう二度と殿の許に戻るつもりはない。江戸を出たときには、まだ殿をお慕いする気持ちも少しは残っていたけれど、この子を身ごもった時、すべては終わった―。私とあの方はどんなことがあっても、もう以前のようにやってはゆけぬ」
泉水の口調は揺るぎない。そのきっぱりとした口調は、泰雅への本当の別離を告げるもののようにも時橋には思えた。
「それでも、お子さまをお生みになられると?」
泉水の口調は揺るぎない。そのきっぱりとした口調は、泰雅への本当の別離を告げるもののようにも時橋には思えた。
「それでも、お子さまをお生みになられると?」

