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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第36章 《巻の参―杏子の樹の傍で―》
―あのお小さかった姫さまが母君さまにおなりになるとは。
 時橋の脳裡に、泉水の幼い日々が走馬燈のように浮かんでは消えていく。
 物心つくまでは、時橋の姿が見えぬと言っては泣き、物心ついてからはお転婆で、少し眼を離せば、庭の樹に登っていた。時橋はそんな泉水をよく叱ったものだ。
 あれほど待ち望んでいた懐妊がこのような形で叶えられるとは、運命の皮肉だろうか。
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