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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第38章 《巻の壱―別離―》

時橋は夢五郎の素性を知らない。だが、時橋は夢五郎のひそかな手引きで榊原の屋敷を脱出して、この寺に来たのだ。あれから、そろそろ一年近くになる。この寺で暮らす中に、しばしば訪れる夢五郎と光照の間に何かしらかの拘わりがあることに気付かぬはずはなかった。元々、勘の鋭い利発な時橋なのだ。
が、自分が口を挟む筋のことではないと判断し、泉水に二人の関係について訊ねることもなく、知らぬふりを通しているのだろうと思われた。真っすぐに見つめてくる時橋の視線を受け止めかね、泉水はうつむく。
が、自分が口を挟む筋のことではないと判断し、泉水に二人の関係について訊ねることもなく、知らぬふりを通しているのだろうと思われた。真っすぐに見つめてくる時橋の視線を受け止めかね、泉水はうつむく。

