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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第38章 《巻の壱―別離―》
この寺に来てから、初めて心の平安とも呼べるものを得たような気がする。もう、泰雅の影に怯えることもない。夢五郎に寄せる想いが異性へのものなのか、それとも頼りがいのある兄のようなひとへの慕わしさなのか、今の泉水には正直、よく判らなかった。ただ、いつもはよく見るあの優しい笑顔を見ないと、心のどこかにぽっかりと穴が空いたような、針で刺したほどの小さな穴に隙間風が吹き抜けてゆくような、そんな頼りなげな心持ちになる。