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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第38章 《巻の壱―別離―》
 背後にふと人の気配がしたような気がして、泉水は振り向いた。
「夢五郎さん」
 相変わらず〝夢五郎〟と呼ぶのは、夢五郎自身が泉水の前では〝藤原頼房〟ではなく、〝夢売りの夢五郎〟でいたいのだと言ったからだ。立ち上がろうとした泉水に、夢五郎は眼顔で首を振った。
「そのままで良い」
 膝の上の黎次郎はいつしか眠っていた。
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